昨日(11月7日)、アメリカ大統領選挙で再選を確実にした民主党の現職、オバマ大統領は、イリノイ州シカゴの演説会場で、日本時間の午後4時前、支持者を前に勝利を宣言しました。
しかし、前途は大変なようです。テレ朝のニュースによりますと、オバマ大統領がこれからは険しい道を歩むという悲観的な内容でした。オバマ大統領は、選挙人の数で勝ったとはいえ、得票数ではあまり差がつきませんでした。つまり、国民の半分からしか信任を得られなかったことになります。再選を受けて、7日はいきなり一時、ダウ平均が300ドル以上下落してしまいました。これは、この年末までに与野党で合意できなければさまざまな減税措置が期限を迎え、来年から一気に増税、同時に大幅な財政削減もしなければならないため、景気が冷え込むことへの懸念からです。まだ、野党と合意のめどは立っておらず、再選早々、オバマ大統領は大きな試練にさらされることになります。
今日の朝日新聞「天声人語」に面白い記事が載っていました。紹介しておきます。
洋の東西を問わず、有言実行の政治は難しい。ケネディ元大統領のスピーチライターだったソレンセン氏が、歴代米大統領の就任演説をすべて調べて、こう皮肉っている。「史上最低の大統領たちが最高に雄弁であることが判(わか)った」。負けていたらオバマ氏も、その仲間入りだったかも知れない
▼むろんオバマ氏は最低の大統領ではないが、雄弁が独り歩きしてきた印象は否めない。米大統領は2期目を任されてようやく一人前ともされる。次の4年でアメリカをどう舵(かじ)取りするか、真価が問われることになる
▼人種も文化も多彩な3億人が暮らす国に、大統領選挙は4年に1度の求心力をもたらす。人々は候補者に言葉を求め、胸に響く言葉によって連帯を深め合う。「民主主義の祭り」と呼ばれるゆえんだ
▼しかし、今回は史上最悪の中傷合戦と言われた。民主と共和、二者択一を迫る悪口(あっこう)のシャワーを浴びて米社会の分裂は深い。勝利宣言で「激しい戦いは国を深く愛すればこそ」と語ったオバマ氏だが、祭りのあと、傷をふさぐのは容易ではない
▼オバマ氏の雄弁に戻れば、日本人の胸をゆさぶったのは「核兵器なき世界」だった。もう次の選挙の心配がない2期目には、思った行動がしやすいという。ぜひ広島と長崎を訪れてもらえないか
▼就任前から「情けない大統領ならいくらでもいる。真に偉大な大統領になりたい」と語っていた。その願望も昨日の勝利で首がつながった。雄弁という木にみのる果実を、見せてほしい。