NHK大河ドラマ「八重の桜」が始まりました。幕末の会津藩を舞台に描いています。主演は広島市安佐北区出身の「綾瀬はるかさん」が演じています。昨年正月過ぎに会津に行きました。会津を見てきているので興味深く見ています。その中で武士の子どもの心構えである「什の掟」を説いています。時代的背景を説明したら、現代の道徳教育に使えるのではないかと言われています。流行語になりそうな「ならぬことはならぬものです」響きもいいし素晴らしい言葉だと感じています。
しかし、このドラマでは主役の八重はこの掟に背いて、我が道をゆき女性として扱われる殻を破っています。会津藩の大きな流れの中に流されながら一人の女性として自立していきます。これからのドラマの展開が楽しみです。
「什の掟」
「什」とは数字の「10」「十」ではなく、会津藩における教育制度。町内を「辺」に分割し、さらにそれを「什」という子弟グループに区分。「什」では「什長」が選ばれ、毎日「什」の構成員を集めて、武士の子どもの心構えである「什の掟」を訓示したと言います。
具体的な「什の掟」は7か条と+1。旧仮名遣いを現代調にあらため、表記しました。
1.年長者の言うことに背いてはなりませぬ
2.年長者には御辞儀(おじぎ)をしなければなりませぬ
3.嘘言(うそ)をいう事はなりませぬ
4.卑怯な振舞(ふるまい)をしてはなりませぬ
5.弱い者をいぢめてはなりませぬ
6.戸外で物を食べてはなりませぬ
7.戸外で婦人と言葉を交えてはなりませぬ
ならぬことはならぬものです
当時の「男女七歳にして席を同せず」などの社会習慣を考えると「7.」は当然のことであるし、武士として食べ歩きは行儀が悪いから忌み嫌うべきであるとの教えを「6.」に盛り込むのもごく自然の話だと思います。「3.」「4.」「5.」は立派な人間として、他人から一目おかれる立場になるべきであるという武士の立場から考えれば、当然だと思います。さらに「1.」と「2.」はとにかく年長者は偉くて正しくて敬うべきだという、儒教思想が色濃くにじみ出ています。
さて、現在においても「什の掟」は通用する、あるいは教えとして成り立つでしょうか。「6.」「7.」は社会習慣が変わっているので「するな」というのは酷だと思います。しかし、「食べ歩き」が行儀が良い、と判断する人はいないと思います。
「3.」「4.」「5.」、すなわち「ウソをつくな、卑怯なことをするな、弱いものいじめをするな」は、それこそ小学校時代から学んでいることで、道徳・倫理観のの初歩レベルの話です。この3点は今でもまったく変わりません。
「1.」と「2.」は、それぞれ「言うことを聞け」は実務的に、「おじぎをしろ」とは形式的に、年長者を敬いなさいと説いていると理解すると、これもまた、現在でも通用すると見ても良いのではないでしょうか。
ただし、この言葉の裏には「年長者は子どもから偉いと判断され、敬われるべき人物でなければならない」の意味もあると思います。子どもは無条件で(「什の掟」に従って)年長者の言うことを聞き、敬意を示しているのだから、年長者・大人も、そのような大人になりなさいという事を説いていると思います。子どもたちの態度・姿勢が年長者にもプレッシャーを与え、矯正をしているということになる。ある意味、子どもだけでなく大人をも「教育」させる、仕組みが「什の掟」には秘められていると感じました。