国連教育科学文化機関(ユネスコ)は12月4日、アゼルバイジャンのバクーで政府間委員会を開き、日本政府が推薦した「和食 日本人の伝統的な食文化」を無形文化遺産に登録することを決めました。日本からの登録は歌舞伎や能楽などに続き22件目です。
食関連の無形文化遺産では、既に「フランスの美食術」「地中海料理」「メキシコの伝統料理」「トルコのケシケキ(麦がゆ)の伝統」が登録されており、和食は5件目です。今回は和食のほか、韓国のキムチ文化の登録も審議される予定です。
和食が、世界に誇るべき特色
まず、自然を大事にしている点です。素材の旬にこだわり、地域の風土・気候に根ざし、材料を最後まで使い切ってむだにしません。
また、見て美しく楽しい。どこからながめても同じ姿の対称的な盛りつけではなく、四季のうつろいも取り込んで食べる人を喜ばします。
多様な調理法も例をみません。生のほか、焼く、煮る、蒸す、揚げる、あえる、発酵させる、干すと幅広い。この結果、包丁などの道具、食べ物を盛る皿や器も多彩です。
さらに「だし」に代表されるうまみが味の土台をつくっています。うまみは5番目の味覚として、英語でも「UMAMI」と表現されています。そして、動物性脂肪が少なく食物繊維は多いので、健康に良いとされています。
こうした特色に加え、「おせちと正月」など年中行事に深くかかわり、家族や地域の絆を生んできた文化的な側面も評価されました。
無形文化遺産
ユネスコの事業の一つで、同じくユネスコの事業である世界遺産が建築物などの有形の文化財の保護と継承を目的としているのに対し、民族文化財、フォークロア、口承伝統などの無形のものを保護対象とすることを目指したものです。
慣習、描写、表現、知識及び技術並びにそれらに関連する器具、物品、加工品及び文化的空間であって、社会、集団及び場合によっては個人が自己の文化遺産の一部として認めるものをいうと定義しています。
こうした一方で、和食の未来を支える足元は危ういと言われています。
家庭でもアジアや欧米の料理が、手軽に食べられるようになった半面、和食に親しむ機会は減りました。伝統野菜など地域独自の食材や昔ながらの料理法は、大量生産が進む中で途絶えかけているものもあります。
食品会社が2011年に発表したアンケートによると、「昆布、かつお節、煮干しなどの素材からだしを取っている」との回答は2割にすぎませんでした。一人きりで食べる「孤食」や、家族一緒でも各自がばらばらに好きなものを食べる「食卓崩壊」という現象も近年問題になっています。
世界への売り込みも大事ですが、学校や地域で和食の魅力を味わい、特色を学び、食材や調理法を受け継いでいく取り組みが欠かせないと思います。和食に育まれてきた私たち自らが、世界に向けて胸を張って、その価値を語れるようにしなくてはならないと思います。