6月議会 開会

 昨日(6月12日)令和元年第2回広島市議会定例会が開催されました。
 改選後初めての議会ですので「市長の所信表明」がありました。
 以下の通りです。(全文掲載)

 

【市長 所信表明】

令和元年第2回広島市議会定例会の開会に当たり、議員各位に敬意を表します。

 私は、去る4月7日に行われた市長選挙において、市民の皆様の御支援により、引き続き市政を担わせていただくことになりました。今定例会における諸議案の説明に先立ち、私の市政推進に当たっての基本的な考え方や主要な施策について所信を申し述べます。

 

 最初に、私の市政推進に当たっての基本的な考え方です。

 私は、市長に就任して以来、生まれ育ったこの広島を世界に誇れる「まち」とすることを目指し、市政を推進してまいりました。その実現に向けて、広島の「まち」の持続的な発展に全力を尽くすことが、私の使命だと考えています。

 

 我が国は平成から令和へと新しい時代の幕開けを迎えました。広島のまちづくりも、原爆からの復興を遂げた第一の変革期、政令指定都市への移行に向けた第二の変革期を経て、今、正に第三の変革期に直面しています。この第三の変革期では、人口減少、少子化・高齢化に伴い発生することが予想される様々な課題に打ち勝ち、地域社会が元気であり続けるための新たな枠組みを構築していくことが重要となっています。

 

 このため、私は、「200万人広島都市圏構想」を提唱し、その実現、深化に力を注いでまいりました。全国的に人口減少が進行するとともに、超高齢社会に突入する中にあって、我がまちを良くするだけでよいのではないかという旧来の発想を越えて、圏域全体で持続的な発展を可能とする新たな枠組みを構築していってこそ、広島の未来を展望することができると考えています。そのため、近隣市町との強固な信頼関係をベースに、地域資源を活用して圏域経済の循環を促進することや、本市が持つ高次都市機能を圏域で共有すること等により、圏域全体の持続的な発展を図りたいと考えています。

 

 また、まちの持続的な発展のためには、地域コミュニティの活性化が欠かせません。「自分たちのまちは自分たちで創る」という考え方の下、地域住民が主体的にまちづくりを進めていくことが重要です。
このため、「地域共生社会の実現」や「災害に強いまちづくり」、「地域のにぎわいづくり」などの課題に対して積極的に取り組む地域コミュニティを支援していきたいと考えています。これにより、地域において、若い世代を含めた新たな人材の育成や活動を支える財源の確保が図れるようになります。そして、このような動きについては、各区役所が地域と協働し、しっかりと支えていきます。

 さらに、本年3月には、地域におけるにぎわいの創出などを目的とする地域コミュニティが、必要となる資金を確保しつつ、その活動を持続することができるようにするために「エリアマネジメント活動計画認定制度」を創設し、その第1号を認定したところです。今後は、このような事例を市内各地で創り出し、定着させることにより、更なる地域コミュニティの活性化を図っていきたいと考えています。

 

 こうしたまちづくりは、「対話・ビジョン・実行」を通じて、市民や議会を始め、国や県、近隣市町、地元企業などの関係者との信頼関係をより強固なものにすることにより、進めてまいりたいと考えています。

 以上のような基本的な考え方の下、今後、私が推進したいと考えている主要な施策の概要について、「活力とにぎわいのあるまち」、「ワーク・ライフ・バランスのまち」、「平和への思いを共有するまち」というまちづくりの三つの要素に沿って説明いたします。

 

  最初に、一つ目のまちづくりの要素である「活力とにぎわいのあるまち」についてです。

 中四国地方最大の都市である本市は、近隣市町や県と連携して、市域を越えた活力とにぎわいを生み出し、圏域経済の発展をけん引しなければなりません。このため、広島の都心については、全ての関係者が一丸となった大改造、すなわち、広島駅周辺地区と紙屋町・八丁堀地区を東西の核と位置付け、都市機能の集積を図ることにより、相互に刺激し高め合う「楕円形の都心づくり」を一層強力に進めてまいります。

 

  東の核である広島駅周辺地区では、更なる活力とにぎわいの創出に向けて、路面電車の駅前大橋ルートの新設を含む広島駅南口広場の再整備等に取り組みます。

 

 西の核である紙屋町・八丁堀地区では、中央公園を含めた地区全体のあるべき姿を共有しながら、昨年の都市再生緊急整備地域の指定を契機に、地域で醸成されつつある推進力を生かしたまちづくりを着実に進めていきたいと考えています。

 

 例えば、都市再生緊急整備地域の指定を受けて可能となる都市計画や税制上の特例措置などを活用し、広島商工会議所ビルの移転と市営基町駐車場周辺での再開発事業を一体で行うリーディングプロジェクトとして推進することにより、民間によるビルの建替えや再開発などの促進につなげます。
 あわせて、サッカースタジアムの建設については、県や広島商工会議所等と協力し、広く県民・市民の意見も伺いながら、広島の新たなシンボルの誕生とともに、更なる活性化につながるものとなるよう取り組みます。
 また、基町住宅地区については、紙屋町・八丁堀地区に隣接する都心の一角であることを生かし、住民と共に、その活性化と多様な世代の共存を目指し、「広島の更なる発展をけん引する街」となるようまちづくりを進めます。

 

 さらに、西部方面からの紙屋町・八丁堀地区等へのアクセス向上に大きな効果が期待されながらも事業が中断されている国道2号西広島バイパスの都心部延伸については、地元経済界や関係自治体と共に、事業の早期再開を目指します。

 そして、このような都心部における大改造は、都心周辺部及び中山間地・島しょ部における活力とにぎわいの創出に向けた取組と同時並行で進めたいと考えています。

 

 都心周辺部については、西風新都の高いポテンシャルを都市圏全体のために生かしていくことができるよう、西風新都内における循環型幹線道路の早期完成とともに、アストラムラインの西広島駅までの延伸に取り組みます。
 この延伸先となる西広島駅については、南北自由通路の整備、南口駅前広場の再整備及び北口地区の駅前広場を含めた土地区画整理事業を進めることにより、広島の西の交通結節点としての機能を強化するとともに、その周辺の装いを一新します。

 

  東部地区連続立体交差事業については、県と連携しながら、早期着手を目指します。

 

 中山間地・島しょ部については、これまでの取組を踏まえながら、地域コミュニティの担い手となる人的インフラの確保に力点を置きたいと思います。
 具体的には、道路網の整備や超高速ブロードバンド環境の確保などこれまで整備された様々なインフラとともに、地域の空き家なども活用し、地域外からの若手新規就農者の地域への定住を促すなど、地域の活性化を推進します。あわせて、地元住民や移住者との対話を重ね、各地域の特色ある自然環境や地域資源を十分に活用した地域振興策を推進します。

 

 例えば、安佐北区の小河内地区では、民間事業者による小学校跡施設の有効活用を進めます。また、南区の似島地区では、バウムクーヘンに関するイベントの開催、似島臨海少年自然の家の利用者増加に向けたハード・ソフト両面からの見直し、似島小・中学校における「いきいき体験オープンスクール」の充実に取り組みます。さらに、安佐南区の戸山地域と佐伯区の湯来地域では、人気の高い飲食店や湯来と湯の山の特徴の異なる二つの温泉、神楽といった文化資源や自然を生かした活動などを結び付け、若い女性やファミリー層を中心とする交流人口の増加を図ります。加えて、両地域の回遊性向上に資するトンネルの整備着手を目指します。

 

 観光の振興については、平和大通りや広島城におけるにぎわいの創出や、現代美術館のリニューアルなどにより、市内観光拠点の再整備・ネットワーク化を進めます。特に、広島城については、民間活力により、江戸期の広島城を想起するような意匠のにぎわい施設を整備することなどにより、観光施設としての魅力の向上を図ります。
 また、市内の平和関連施設を周遊できるピースツーリズムの推進や広島広域都市圏内の市町と連携した観光プログラムの開発、観光資源・観光サインの整備とともに、グローバルMICE都市にふさわしいMICE施設の整備に向けた検討を進めます。加えて、観光客の滞在時間の延長や、観光消費額の増加といった観点も踏まえて、神楽等の伝統芸能など様々な観光資源を活用した早朝や夜の観光メニューの充実に取り組みます。

 さらに、地域経済を発展させていくためには、それを支える人材、特に、若者の地元企業への就職・定着が不可欠となります。このため、地元企業や国、県、圏域内の市町等と連携し、地元企業におけるインターンシップの拡充や、東京・関西圏からのUIJターンなどを促進することにより、人材確保に取り組みます。

 

 次に、二つ目のまちづくりの要素である「ワーク・ライフ・バランスのまち」についてです。

 「ワーク・ライフ・バランスのまち」は、「活力とにぎわいのあるまち」という土台の上に、多様な価値観を持つ市民がそれぞれに生き生きと暮らすことができるまちです。
そのようなまちを実現するために、まず、高齢者や障害者、子どもなど支援が必要な住民を地域でまるごと支える「地域共生社会」の実現を目指したいと考えています。このため、地域に密着した総合的な福祉施策の展開に向けて、東区で保健師の地区担当制を試行しているところですが、これを全区展開することにより、課題を抱えている家庭ごとに、その実情に則した支援ができるような体制を備えたまちづくりを目指します。

 

 また、地域福祉を推進するためには、個人による活動の「自助」、地域社会としての取組である「共助」、医療・介護保険等の「公助」を適切に組み合わせることが必要です。
 例えば、「高齢者いきいき活動ポイント事業」は、高齢者の自身の健康づくり活動などへの参加を、主に地域コミュニティが主体となる活動団体が確認してポイントを付与するなど事業運営の担い手となり、それを基に行政が奨励金を支給するという仕組みになっています。このように「共助」が、「自助」と「公助」をつなぐという仕組みは非常に重要であることから、こうした事業を更に充実していくことにより、高齢者の健康づくりと社会参加を促進したいと考えています。
 また、障害者福祉については、障害を理由とする差別を解消するため、「障害者差別解消条例(仮称)」の制定に向けた検討を進めます。

 

 医療体制の充実については、「北部医療センター安佐市民病院」に、内科・外科のチームにより総合的に治療を行う「脳・心臓血管センター」を設置し、また、県北部では初めてとなる「救命救急センター」を整備することにより、24時間、重篤患者の受入れが可能な医療体制を確保します。さらに、現在の安佐市民病院の北館に設置する「安佐医師会病院」には、市内初の「地域包括ケア拠点」を併設し、在宅医療・介護連携の定着のための先導的な機能を整備します。

 

 広島の未来を担う子どもの育成については、まず、乳幼児期の子どもの発達段階に応じて、養育から教育へと重点を移していくことを基本とし、それを担う保育園と幼稚園は、その役割分担を越えて一元的な対応ができるようにする必要があると考えています。このため、市教育委員会に「乳幼児教育保育支援センター」を設置し、各機関との連携強化や教育保育カリキュラムの開発を進めます。
 待機児童の解消に向けては、保育園等の定員増を図ります。加えて、延長保育、一時預かり、病児・病後児保育を充実するなど、公立・私立の役割分担も念頭に置きつつ、保育サービスの量的・質的充実に取り組みます。

 

 また、女性活躍の推進も重要な課題です。本市としては率先して、女性がその能力を遺憾なく発揮できるよう、テレワーク等を活用した柔軟な働き方ができる環境整備や長時間勤務の削減等に取り組むとともに、経済団体等と連携し、こうした取組の市内企業への普及を図ってまいります。

 

 学校教育については、幼児教育から、小学校、中学校、高等学校、大学がそれぞれ連携しながら、公立・私立の役割分担を踏まえつつ、それぞれの段階に応じて、様々な特性を持った児童・生徒・学生に適応する多様な教育プログラムを提供できるようにしていきます。
また、一昨年、いじめを主たる原因として、市立中学校で生徒の尊い命が失われました。今後、二度と同じことを繰り返さないために、いじめや不登校に対する学校の対応力を抜本的に強化するとともに、教員が限られた時間の中で児童・生徒と向き合う時間を確保できるよう、学校における働き方改革を推進します。

 

 さらに、「国際平和文化都市」としての特性を生かした実践的な会話ができる英語教育の導入を図るなど、学力向上対策を一層推進します。
 加えて、食育の充実や中学校のデリバリー給食における課題への対応を含め、本市全体の給食提供体制の在り方を検討します。

 

 スポーツ・文化芸術の振興に関しては、市民一人一人が日々の暮らしに潤いと豊かさを実感でき、自分たちの住むまちへの愛着を高め、また、まちの魅力が更に向上するよう、取組を強化していきたいと考えています。
スポーツの振興については、「スポーツ王国広島」として、引き続きトップレベルの国際的・全国的スポーツ大会の誘致を推進します。また、来年には、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が開催されます。この機会を捉え、平和への思いを発信するため、事前合宿を行う海外の代表チームとの親善試合の実施等に取り組んでいきたいと考えています。
 文化芸術の振興については、経済界とも協力して、将来、シンフォニーホールを整備することも視野に入れながら、広島交響楽団を始めとする地元音楽関係者と連携して、市内の各所で様々な音楽に親しめるようにします。また、市内の美術館や芸術関連施設の更なる有効活用を図るなど、文化芸術のあふれるまちづくりの深化に向けて、その在り方を検討したいと考えています。

 

次に、三つ目のまちづくりの要素である「平和への思いを共有するまち」についてです。

 本市は、世界で最初に被爆し、廃墟から立ち直ったまちとして、核兵器廃絶と世界恒久平和の実現に向けて、被爆者の「こんな思いを他の誰にもさせてはならない」という思いを根底に、「平和を希求するヒロシマの心」を国内外の市民社会に発信し続け、その共感を得られるよう努力を重ねなければなりません。
そのため、私が会長を務める平和首長会議の加盟都市数を着実に増やすとともに、今後は、加盟都市の若者の交流に更に力を入れたいと考えています。また、来年開催される、平和の祭典である東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を、「ヒロシマの心」を世界に向けてアピールする絶好の機会と捉えて、各国選手・役員等に来広を働き掛けるとともに、都内等で原爆・平和展を開催したいと考えています。

 また、平和への思いが為政者や市民社会に共有されるようにするために、被爆地訪問を呼び掛けるなど「迎える平和」を引き続き推進します。

 

 本年4月に平和記念資料館本館がリニューアルオープンしたことに続き、平和記念公園レストハウスを建設当時の姿を残す形で保存・活用するとともに、旧中島地区の被爆遺構の展示に向けた整備を行い、平和記念資料館及び国立広島原爆死没者追悼平和祈念館と一体となった更なる発信力強化も推進します。また、広島市立大学広島平和研究所及び広島大学平和センターと一体となって、広島大学旧理学部1号館を、平和に関する教育研究等の新たな拠点として整備していきます。
 さらに、被爆者の高齢化が進む中、次代を担う青少年に「ヒロシマの心」を伝えていくことも重要です。このため、平和記念公園を訪れる外国人に被爆の実相を英語で伝える高校生等のユースピースボランティアの育成や、広島への修学旅行誘致の強化などを進め、平和教育の推進に力を注ぎます。加えて、平和記念式典の静ひつ確保のための実効性のある取組を検討します。

 

 また、こうした三つの要素とともに「災害に強いまちづくり」にもしっかり取り組みます。
  改めて、平成26年8月、昨年7月の豪雨災害により、お亡くなりになられた方々の御冥福をお祈りいたしますとともに、被害を受けられた多くの方々に、心からお見舞い申し上げます。

 被災地を安全・安心なまちによみがえらせるために、平成26年8月豪雨災害については、「復興まちづくりビジョン」に基づく取組を着実に推進します。また、昨年7月の豪雨災害からの復旧・復興に当たっては、改良復旧に主眼をおいて、国や県と連携し、砂防ダムや河川、道路等の基盤施設の整備を推進するなど、住民からの意見も伺いながら、3年間を基本的な復旧期間として全力で取り組みます。
さらに、災害が発生した場合に人命が失われることを防ぐためには、災害の危険性を我がこととして認識していただくことが極めて重要であり、とりわけ人命を守る避難については、地域コミュニティの役割が大きいと考えています。
 このため、これまでの自主防災組織に対する「わがまち防災マップ」の作成や、防災リーダーの育成などに対する支援に加え、河川の水位状況などを確認できる防災ライブカメラの設置支援など住民の確実な避難につなげるための対策を推進します。
そして、特に、昨年7月の豪雨災害で人的被害が発生した被災地域の住民の取組を区役所も一体となって支援し、それぞれの地域の防災体制を整備するモデル事業を実施するなど、その成果を全市に広げてまいります。

 

 以上、申し上げたようなハード・ソフト両面でのまちづくりを限られた経営資源の下で着実に実行していくためには、今後増加が見込まれる社会保障のための義務的な支出と、将来に備えた社会資本整備や子育て・教育等のための裁量的な支出をバランスよく賄っていくことが、必要不可欠です。

 

 このため、市の政策を俯瞰し、「全体最適」を追求するという発想に立って、ヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源を有効に活用し、トップマネジメントで抜本的な経営改革を推進していきます。

 このような市政を推進するに当たっては、議会との関係を重視し、対話を重ねながら、共に広島のまちづくりに取り組んでいくため、よりよい関係をつくり上げたいと考えています。

 

 以上、今後4年間の市政を推進するに当たり、所信の一端を申し述べました。これからの50年、100年先を見据え、あらゆる分野で質的向上を図り、将来に向けて持続的に発展する広島のまちづくりに果敢にチャレンジし、これまでの様々な努力を必ずや結実させ、市民の夢や希望あふれる大きな花を咲かせられるようにしていきたいと考えています。
 「世界に誇れる『まち』広島」を実現するため、情熱を持って市長としての使命を果たす決意であります。

 

 議員各位並びに市民の皆様の一層の御支援と御協力を切にお願い申し上げます。

 

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