梅雨のころ、北海道の北側にある「オホーツク海高気圧(オホーツク海気団)」と南の海上にある「太平洋高気圧(小笠原(おがさわら)気団)」が日本付近でぶつかって、押しくらまんじゅうをしています。暖かい空気のかたまりと冷たい空気のかたまりの境目は線のように延びて「前線」ができます。これが「梅雨(ばいう)前線」です。北と南の高気圧はがっぷり四つの状態だから、前線はあまり動かず、1カ月以上も雨やくもりの日が続きます。
梅雨が終わりに近づくと、南西の方から暖かくて湿(しめ)った空気のかたまりが押し寄せ、さらに南からも暖かい湿った風が吹きつけてくる。これが大雨をもたらします。よく天気予報で「前線を刺激(しげき)して活発になる」と説明する状況です。
梅雨の終わりには、梅雨前線に沿うように中国大陸の南の方から湿った暖かい空気のかたまりが日本へ流れ込むようになります。この空気のかたまりは天気図で長く延びた舌(した)のようにみえる。「湿舌(しつぜつ)」と呼ぶ現象です。湿舌が西から延びて東シナ海の上を通る間に、大量の水蒸気を取り込みます。
地上では、高気圧から時計回りに風がふき出します。夏が近づいて太平洋高気圧が勢力を増すと、西側や北側へ張り出してきます。元気になった太平洋高気圧の西のへりでふき出す風によって、南の海から暖かくて湿った風が日本へ向かってふき込むようになります。
もともと、湿舌では弱い上昇気流が発生しています。そこに大量の水蒸気を含んだ南よりの風がぶつかると、一気に持ち上げられて、強い上昇気流になります。積乱雲が次々とできて、強い雨が長時間にわたって降り続きます。それで記録的な大雨になります。
湿舌が発生しているとき、大雨が降るのは天気図にある梅雨前線よりも南側になることが多い。
また、記録的な大雨には地形も関係することが多い。暖かくて湿った風が山の斜面(しゃめん)にぶつかると、強い上昇気流ができます。風がどんどん流れ込んでくると、積乱雲が次々と発生しやすい。
太平洋高気圧の勢力がさらに強まると、梅雨前線は北側へ押し上げられます。そうなれば梅雨明けです。