安倍総理大臣は、10代のころから、大腸の粘膜が炎症を起こし、激しい腹痛や下痢を繰り返す難病、「潰瘍性大腸炎」を抱えてきました。
14年前の平成18年に戦後最年少の52歳で総理大臣に就任しましたが、その症状が悪化するなどして、およそ1年で退陣しました。
そして、8年前、平成24年12月に再び総理大臣に就任し、第2次政権を発足させて以降は、炎症を抑える新薬によって、症状は安定してきたものとみられ7年8か月におよび、政権を担ってきました。
しかし、関係者によりますと、ことし6月の検査で、異常が見つかり、今月17日に慶応大学病院で行った検査では、症状が悪化していることがわかったということです。
その1週間後の検査では、投薬治療で症状の改善がみられたものの向こう1年間、投薬治療が必要だと診断されたということです。
このため、安倍総理大臣としては、「体調が万全でない中、政治判断を誤ることがあってはならない」と考え、総理大臣を続けることが難しいと判断したものとみられます。
潰瘍性大腸炎とは
潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜が炎症を起こし、激しい腹痛や下痢を繰り返す難病で、原因ははっきり分かっていません。
患者は、20代を中心に若者から高齢者まで幅広い世代にわたり、国内の患者数は16万6000人以上、1000人に1人ほどで難病の中で最も多いとされています。
治療は主に投薬で行われ、飲み薬で効果のあるものが開発されています。
また、炎症を抑えるステロイド剤や炎症を引き起こす物質を抑える点滴の薬なども使われますが、中には重症になる人もいて、発熱や貧血などの症状が出て、大腸がんを併発するリスクが高まります。
患者のおよそ5%は症状が改善せず、大腸を摘出しなければならなくなることもあります。
手術を行えば、腹痛などの症状は改善されますが、余分な水分を吸収する大腸がないため、トイレの回数が多くなり、術後も日常生活での支障が続くことになることもあります。
「一生付き合う病気」
治療について九州大学大学院消化器・総合外科の森正樹教授は、「炎症を抑える薬などを使って症状をコントロールする治療がメインとなる。最近は、重症の患者にも効果がある治療薬も出てきていて、日常生活に影響がない人も多くいる。ただ、症状が1回収まれば終わるものではなく、薬でコントロールしながら一生付き合っていかなければならない病気だ」と話していました。